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東京地方裁判所 平成8年(特わ)422号 判決

裁判所書記官

宮島恒雄

本店所在地

東京都豊島区南池袋二丁目三一番五号

日本ピアスシステム株式会社

(右代表者代表取締役 大賀保次)

本籍

徳島県麻植郡鴨島町鴨島一七四番地の六

住居

東京都新宿区納戸町二一番地

市ケ谷納戸町ハイデンス五〇二

会社役員

高橋知之

昭和二七年六月一三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官石垣陽介、弁護人濱口善紀各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日本ピアスシステム株式会社を罰金二一〇〇万円に、被告人高橋知之を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人高橋知之に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日本ピアスシステム株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都豊島区南池袋二丁目三一番五号(平成六年一月三一日以前は同都同区東池袋一丁目二番七号、同三年七月二二日以前は同都新宿区高田馬場一丁目一七番一八号)に本店を置き、装身具・貴金属の製造、販売、輸出入等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人高橋知之(以下「被告人」という)は、被告会社の取締役の地位にあって、実質経営者として被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  同三年六月二四日から同四年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四三七三万六四五四円(別紙1(1)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年七月二八日、同都豊島区西池袋三丁目三三番二二号所在の所轄豊島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三七万五〇五三円で、これに対する法人税額が九万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第六二七号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一五六三万三八〇〇円と右申告税額との差額一五五三万六〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  同四年六月一日から同五年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇三七八万六六五二円(別紙1(2)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年七月一六日、前期豊島税務書において、同税務署長に対し、その欠損金額が一〇〇八万一〇四二円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三八一四万二六〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  同五年六月一日から同六年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九三九九万四四七三円(別紙1(3)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年七月一九日、前記豊島税務署において、同税務署長に対し、その欠損金額一〇二五万七九五一円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三四四八万四二〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人及び被告会社代表者の当公判廷における各供述

一  被告人の検察官に対する平成八年二月一六日付け(二通)及び同月二〇日付け(三通。但し、五丁綴りのもの、本文二九丁綴りのもの、本文四丁綴りのもの)各供述調書

一  大賀正子及び大賀保次の検察官に対する各供述調書

一  岡田年雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の商品売上調査書、役員報酬調査書、広告宣伝費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書及び損金の額に算入した道府県民税利子割調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書二通(但し、支払利息割引料についてのもの及び豊島税務署の所在地についてのもの)

判示冒頭の事実について

一  登記官作成の履歴事項全部証明書、閉鎖した役員欄の用紙の謄本(二通)及び閉鎖登記簿謄本

判示第一の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第六二七号の1)

判示第二、第三の事実について

一  高橋眞理子の検察官に対する供述調書

一  森山ヒロユキの大蔵事務官に対する質問てん末書

一  大蔵事務官作成の事業税認定損調査書、申告欠損金調査書及び控除所得税額調査書

一  検察事務官作成の捜査報告書(但し、事業税認定損についてのもの)

判示第二の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の商品仕入調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

2  被告人

判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人につき、いずれも懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、装身具・貴金属の製造、販売、輸出入等を目的とする被告会社が、三事業年度にわたり合計八八〇〇万円余の法人税を免れた事案である。ほ脱税額は相当高額で、ほ脱率も通算約九九・九パーセントと極めて高率である上、その主たる手口は、ピアスの対面販売により顧客から現金で受領した売上金を大幅に除外したり、役員報酬を架空計上するといったもので、計画的かつ悪質である。また、脱税の動機をみても、被告人は、被告会社の事業の発展のために資金を蓄えておきたかったなどと述べているが、格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告人は本件各犯行を深く反省し、当初より事実を認めるとともに、国税局に対し関係書類を進んで提出するなど、調査・捜査に協力していること、被告会社は顧問税理士の指導を受けながら経理処理体制の改善に努めていること、被告人には全科前歴が全くないことなど、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二六〇〇万円、被告人・懲役一年)

(裁判官 平木正洋)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

修正損益計算書

〈省略〉

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

ほ脱税額計算書

日本ピアスシステム株式会社

(1)

自 平成3年6月24日

至 平成4年5月31日

〈省略〉

(2)

自 平成4年6月1日

至 平成5年5月31日

〈省略〉

(3)

自 平成5年6月1日

至 平成6年5月31日

〈省略〉

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